ご挨拶

一般社団法人市ヶ谷台論壇の会長を務めております佐藤謙です。

  最近の我が国の安全保障や防衛を取り巻く状況は、私が防衛省に勤務していた時代と比べますと、隔世の感があります。以前の議論の中心は、例えば、憲法に関して言えば、自衛隊の存在が合憲であるのか否か、その活動が憲法の枠を超えているのか否かであり、また、予算や事業についても、GNP1%の枠内か否かというものでありました。しかし、今やそのようなテーマは、議論の中心ではなくなり、現在の安全保障や防衛に携わる皆さんにとっては、そのような議論があったことすら認識していないのかもしれません。それほどに、環境は変わりました。

 安全保障環境をみれば、米ソの冷戦というある意味で安定的な環境がなくなり、我が国も、中国や北朝鮮の動向に直接対応することを迫られるようになりました。また,米国のトランプ政権は、普遍的な価値観よりも自国の国益を第一に考えて行動しており、我が国も、米国の同盟国という地位に安住していることは難しくなりました。

 また、政策的にほとんど抑制されていた武器の輸出が、実質的にできるようになり、既に、実務上の課題となっています。

 更にいえば、防衛「省」への移行、国家安全保障会議の創設や自衛隊の明記を中心とする憲法改正論議など、国政における、安全保障や防衛の比重が格段に大きくなっています。

 このような状況を踏まえると、今求められている最も重要なことは、我が国の安全保障や防衛についての現実に即した議論を深めていくことではないかと考えています。その際に留意すべきは、地に足のついた、落ち着いた、そして、実務を踏まえた議論を進めていくことだと思います。このような観点から、今回、一般社団法人市ヶ谷台論壇を設立した次第であります。これから、この一般社団法人市ヶ谷台論壇を舞台に、大いに議論が盛り上がることを期待しております。

 

平成30年5月

 一般社団法人市ヶ谷台論壇 会長 佐藤謙